Column水質検査・分析やバイオ炭・土壌改良・超純水オンライン計などに関するコラム一覧

長期保存試験の適切な保管管理と条件維持のための備え

長期保存試験における保管管理の条件設定と災害への備え

医薬品の承認申請で必須となる長期保存試験(長期安定性試験)では、試験期間を通じて適切な保管条件(温度・湿度)を維持することが欠かせません。しかし実務では、温度・湿度管理基準、モニタリング頻度、逸脱管理、安定性試験設備の要件など、判断に迷うポイントが数多くあります。特に数か月から数年に及ぶ試験では、季節変動や予期しない設備トラブルにも対応できる体制が必要です。

ガイドラインの内容を理解していても、実際の現場では「この温度変動は長期保存試験の許容範囲に入るのか」「モニタリング記録はGMP対応として十分なのか」と不安になるケースも多いのではないでしょうか。長期保存試験の保管管理を適切に整備することは、ICHガイドライン準拠の安定性データの信頼性を確保し、承認申請(CTD)のスムーズな進行に直結します。

ここでは、長期保存試験の保管条件設定のポイント、温湿度モニタリングの実務的な仕組み、停電・災害時のリスク管理といった、安定性試験で必ず押さえるべき項目をわかりやすく解説します。開発部門や品質管理部門でのPQ・PV時の安定性評価にも役立つ内容として、信頼性の高い試験結果を得るための参考にしてください。

試験期間中の品質を守るための保管条件設定の基本

試験期間中の品質を守るための保管条件設定の基本

長期保存試験(長期安定性試験)を適切に実施するためには、試験開始前に保管条件を正しく設定することが不可欠です。設定する貯蔵条件は、申請する有効期間、貯蔵方法、製品特性、流通環境などを十分に踏まえて決定する必要があります。特に承認申請やPQ・PVに用いる安定性データでは、科学的根拠に基づいた条件設定が求められます。

ICH安定性試験ガイドラインでは、一般的な原薬および製剤の標準的な長期保存条件は25℃±2℃/60%RH±5%RHとされています。ただし、温度依存性が高い原薬や製剤については、合理的な根拠があれば別条件を採用することも可能です。たとえば、貯蔵温度を添付文書に記載する場合には、長期保存試験はその記載温度での保管が求められ、湿度条件についても製剤特性に応じた設定が必要になります。

保管条件を決める際の考慮点(製剤特性に基づく設定)

長期保存条件の設定では、まず製剤特性と包装形態の影響を正しく評価することが重要です。

固形製剤(錠剤・カプセル)

高湿度の影響を受けやすいため、標準湿度条件(60%RH)を適用するのが一般的です。

水分透過性のない一次包装(液剤・懸濁液・アンプルなど)

温度条件は標準保存条件を適用しますが、湿度の影響を受けないため湿度条件は不要です。

水分透過性のある包装(PTP、HDPEボトルなど)

水分変化が品質に影響する場合、包装形態に応じた特別な湿度管理が必要になります。

また、低温保存下で物理変化が起こる製品については、低温影響を意図的に検出できる条件の設定も求められます。

  • 例:沈殿しやすい懸濁液・乳剤、粘度変化が起こりやすいクリーム剤・油性剤・半固形製剤など。

試験期間中の温度管理・モニタリングと記録

長期保存試験では、設定した温度・湿度条件を継続的かつ厳密に維持することが求められます。

試験の信頼性を保証するため、以下の対応が必要です。

  • 温湿度の定期モニタリング
  • 記録の保存とレビュー
  • 条件逸脱発生時の影響評価と迅速な対応

これらはCTD品質パートやGMP対応の観点からも必須の管理項目です。

長期保存試験の測定時期(ICH Q1A準拠)

測定時期は、原薬・製剤の品質変化を十分に捉えられるよう、次の間隔が推奨されます。

  • 1年目:3か月ごと(0、3、6、9、12か月)
  • 2年目:6か月ごと(18、24か月)
  • それ以降:年1回(36か月以降)

測定タイミングに合わせて保管状態の安定性を確認し、試験の信頼性を確保することが品質管理部門の重要な役割です。

温度と湿度を正確にモニタリングするための管理ポイント

温度と湿度を正確にモニタリングするための管理ポイント

長期保存試験(長期安定性試験)を確実に実施するためには、設定した温度条件・湿度条件を継続的に維持する管理体制が不可欠です。温湿度が基準値から逸脱すると、データの信頼性が揺らぐだけでなく、申請用安定性試験として再試験が必要になるリスクもあります。特にICH Q1Aに準拠した安定性試験では、環境管理の妥当性が承認申請やPQ・PV工程の品質保証に直結します。

標準的な長期保存試験では、25℃±2℃/60%RH±5%の許容範囲を維持することが求められます。しかし実際の保管庫では、季節変動、設備負荷、扉の開閉頻度によって条件が変動しやすいため、自動記録装置による連続モニタリングが必須となります。

モニタリング頻度と記録方法(ICHガイドライン準拠)

温度と湿度は24時間連続で測定し、自動で記録する仕組みを整備することで、わずかな逸脱にも即時対応できます。

記録すべき情報には以下が含まれます。

  • 測定日時
  • 温度・湿度の実測値
  • 測定機器の識別情報
  • アラーム発生時の状況と対応内容

これらはGMP準拠の記録として、試験終了後も保管し、承認申請時や当局査察に対応できる形に整理しておく必要があります。

逸脱発生時の対応(試験継続可否の判断)

保管条件から逸脱した場合は、逸脱の期間・規模・原因を正確に把握し、試験への影響を評価します。短時間の逸脱で影響が軽微なケースもありますが、長時間に及ぶ場合にはデータの妥当性を再評価し、試験継続の可否を判断しなければなりません。

特に加速試験(40℃±2℃/75%RH±5%、6か月)で逸脱が生じた場合、ICH Q1Aの要件に従い、中間条件での追加試験が必要となることがあります。

したがって、逸脱を最小化するための温湿度モニタリングと即時のアラート体制が、安定性試験の品質保証において極めて重要です。

測定機器の校正・バリデーションと保守管理

温度計・湿度計の精度は、安定性試験データの信頼性を左右します。

そのため、

  • 定期的な校正(通常は年1回以上)
  • 校正証明書の保管
  • 測定装置の動作確認
  • センサーの清掃や電池交換

といった日常的なメンテナンスが欠かせません。

測定機器の適格性を維持することは、GMP、品質保証、承認申請の全ての文脈で極めて重要です。

災害や停電など予期せぬ事態に備えた対策の立て方

長期保存試験(長期安定性試験)は、数か月から数年という長期間にわたり継続するため、地震・台風・落雷・停電といった災害リスクを織り込んだ管理体制が欠かせません。特に停電は、保管庫の温度・湿度が急激に変動し、ICH Q1A準拠の安定性試験データの信頼性を損なう重大リスクとなります。開発部門、品質管理部門(品管)にとっては、承認申請やPQ・PV業務に直結するため、事前の対策が重要です。

停電時には保管庫の温度制御が停止し、外気温の影響を強く受けます。結果として温湿度が規定条件を外れると、試験結果に影響が生じ、承認申請で追加データ提出を求められる可能性も生じます。

非常用電源設備の導入と維持管理(停電時の最優先対策)

停電対策として最も有効なのは、無停電電源装置(UPS)や非常用発電機の導入です。これにより、停電発生直後から一定時間は温度制御を維持でき、安定性試験の継続性が確保されます。

また、長時間停電に備え、検体を**別系統の保管庫や別拠点へ移送するBCP(事業継続計画)**も必須です。移送先が同一の温湿度条件(例:25℃/60%RH)を維持できる施設かどうか、事前に確認しておく必要があります。

緊急時の連絡体制、担当者の役割分担、移送判断の基準も明確にしておくことで、品質リスクを最小化できます。

温度逸脱発生時の記録と処置(承認申請で最も問われる部分)

災害や停電で保管条件からの逸脱が生じた場合には、発生時刻と復旧時刻、逸脱の幅、継続時間を正確に記録します。自動記録装置を導入しておけば、客観的データとして残り、影響評価に利用できます。

逸脱が軽微な場合には試験継続が可能ですが、長時間の場合は以下を検討します。

  • 試験検体への影響評価
  • 追加試験の要否
  • ロットの試験中止と再試験の判断

開発部門・品管部門は、この判断が承認審査の信頼性に直結することを理解し、逸脱処理手順書を整備しておく必要があります。

災害時の事業継続計画(BCP)の整備

長期保存試験の信頼性を守るためには、災害時の事業継続計画(BCP)を策定しておくことが推奨されます。具体的には、

  • 緊急連絡網
  • 試験検体の移送フロー
  • 代替保管庫の確保
  • 必要設備の動作確認
  • UPS・発電機の定期点検

などを文書化し、年1回以上の訓練で実効性を確認します。

品管部門は日常から災害リスクを意識し、温湿度逸脱を最小化する体制を維持することで、承認申請の遅延や再試験コストの増大を防ぐことが可能になります。

長期保存試験の品質を守る適切な保管管理を

長期保存試験を成功させるには、試験期間中の保管条件を適切に設定し、温度と湿度を正確にモニタリングすることが欠かせません。標準的な保存条件である25℃±2℃/60%RH±5%を維持するには、自動記録装置による連続的な監視体制と、逸脱が発生した際の迅速な対応手順が求められます。さらに、災害と停電といった予期せぬ事態に備えて、非常用電源設備の導入と事業継続計画の策定も必要です。日頃からリスクを想定し、試験検体を守るための準備を整えておくことで、信頼性の高い試験結果を得られます。

クリタ分析センター株式会社は、医薬品の安定性試験において豊富な実績を持ち、GMP省令に基づく長期保存試験と加速試験を高い品質で実施しています。製薬会社100社を超える監査実績と、厚木事業所と滋賀事業所での万全な管理体制により、お客様の試験検体を適切な環境で保管し、正確なデータをご提供いたします。長期保存試験の保管条件と管理体制についてお困りの際は、お気軽にご相談ください。

保管管理と長期保存試験に関するご相談はクリタ分析センター株式会社

商号 クリタ分析センター株式会社
( Kurita Analysis Service Co.Ltd. )
住所 [本社] 〒305-8504 茨城県つくば市高野台二丁目8番14号
TEL 029-836-7011
FAX 029-836-7037
URL https://www.kuritabunseki.co.jp
拠点 営業拠点一覧は、こちらをご覧下さい