長期保存試験を申請用に準備する理由と薬事承認に向けた時期の考え方
長期保存試験の申請用データ取得理由と薬事手続きの時期を解説
医薬品の承認申請を控えているものの、長期保存試験をいつ開始すべきか、どの程度の安定性試験データを揃えればCTD提出に十分なのか、判断に迷われていませんか。申請用データの準備は避けて通れないプロセスであり、特に初めて薬事申請を担当する開発部門・品質管理部門にとっては、不明点が多く不安を感じるのも当然です。
実は長期保存試験には、ICHガイドラインとGMPの要件に基づく明確な開始タイミングと必要データ量が定められています。これらを理解し、戦略的に試験計画を進めることで、無駄な遅延を避けながら確実に承認取得へつなげられます。
ここでは、長期保存試験が承認申請に不可欠である理由、薬事申請での進行フロー、測定時期の設定方法、そして12か月データで申請できる実務のポイントを順を追って解説します。計画的に安定性データを準備する手順を押さえ、承認取得までの道筋を確実なものにしましょう。
医薬品承認における長期保存試験の実施理由
医薬品承認の申請書類(CTD)を作成する際、安定性試験データの添付は必須であり回避できません。安定性試験の目的は、温度や湿度の変動、光曝露といった多様な環境ストレス下で製品品質がどのように変動するかを科学的に明らかにすることです。得られたデータは、原薬の再試験期間、製剤として使用できる有効期間、適切な保管条件を設定する際の基盤となる品質保証情報として扱われます。
安定性評価にはICHガイドラインに基づく3つの主要試験があります。実保管環境を再現する長期保存試験、劣化を短期間で可視化する加速試験、さらに厳しい条件で限界特性を把握する苛酷試験です。承認審査で最も重視されるのは長期保存試験であり、規定した温度・湿度条件下で原薬や製剤の品質が安定的に維持されるかを検証します。
承認取得に向けたデータ準備の実際(CTD品質パートに必須)
設定したい有効期間全体を通じて品質が維持されることを示せるのは、長期保存試験以外にありません。例えば有効期間3年を想定する場合、本来であれば丸3年分のデータが理想ですが、薬事スケジュールや開発スピードを考えると現実的ではありません。
そのため制度上、申請段階では 長期保存試験12か月分+加速試験6か月分のデータが揃えば申請受理可能となっています。申請後も長期保存試験は継続(コミットメント試験)し、追加データを規制当局へ順次提出する流れが一般的です。
品質の信頼性を科学的に担保する(開発部門・品管部門が押さえるべき要点)
長期保存試験で蓄積されるデータは、医薬品の有効性・安全性を支える品質安定性の科学的エビデンスです。主成分の含量、分解生成物、外観変化(色調・性状)、製剤機能(溶出・硬度・pHなど)を、定めた測定間隔で継続的に評価します。
- 測定間隔は一般に、
- 初年度:3か月ごと
- 2年目:6か月ごと
- 3年目以降:年1回
というICH準拠のスケジュールが採用されます。こうして収集されたデータから時間経過に伴う品質変化を精密に解析し、有効期間および保管条件の科学的根拠として確立していきます。
薬事申請の基本的な流れと必要な準備事項
薬事承認手続きとは、医薬品の製造販売に必要な許可を取得するための一連のプロセスを指します。国内で医薬品を市販するには、医薬品医療機器等法に基づき、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)または都道府県の窓口へ各種申請書類を提出することが義務づけられています。提出書類では、当該医薬品の安全性、有効性、品質保証体制をCTD形式で論理的に示し、規制当局による承認審査を受けることになります。
このプロセスにおいて、安定性試験から得られるデータは品質証明の核心です。申請者は、製造から物流、保管を経て患者の手元に届くまでの全工程で品質が維持されることを科学的データで証明しなければなりません。特に長期保存試験の結果は、申請書に記載する有効期間やリテスト期間の妥当性を裏付ける根拠として最も重視されます。
承認書類に添付する安定性試験データ(長期保存試験+加速試験)
新有効成分含有医薬品(NCE/NME)の承認申請では、一般に 長期保存試験12か月分+加速試験6か月分 が揃えば申請を開始できます。試験にはICH Q1Aに準じて、パイロットスケール以上で製造した3ロット以上の代表ロットを用います。これらのロットは、非臨床試験・臨床試験に使用した治験薬の品質を適切に反映し、かつ商業生産品の品質特性を再現している必要があります。
規定期間分のデータが揃えば、途中段階でもCTD提出が認められます。ただし申請者には、承認判定が下りるまでに取得された追加データをPMDAへ提出する義務があります。また申請書には、安定性試験を継続中である旨を備考欄に明記します。
承認後に求められる試験継続(コミットメント試験)
承認時点で、代表ロットの長期保存試験結果が申請した有効期間(またはリテスト期間)の終点に達していない場合、承認後も試験を継続する必要があります。これは「コミットメント試験」と呼ばれ、申請時の期間設定が科学的に妥当であることを最終的に検証する仕組みです。
規制当局から追加データの提示を求められるケースもあるため、申請後も継続的にデータを管理し、迅速に提出できる体制を整えておくことが不可欠です。開発部門・品質管理部門にとっては、承認取得後のフォローアップを確実に行うことが、最終的な品質保証につながります。
長期保存試験の測定時期設定における基本原則
長期保存試験の成否は、測定タイミング(測定間隔)の設計によって大きく左右されます。ICH Q1A(R2)ガイドラインでは、原薬・製剤それぞれの安定性特性を適切に捉えるための推奨測定間隔が明確に示されています。妥当な測定スケジュールを設定することで、品質の時系列変動を漏れなく把握し、PMDA審査で必要となる有効期間・リテスト期間の科学的根拠を確固たるものにできます。
測定間隔の設定は、申請時に掲げるリテスト期間(原薬)または有効期間(製剤)の長さによって変わります。1年を超える期間を設定する場合、初年度は3か月ごと、2年目は6か月ごと、以降は期間満了まで年1回の測定を行うことが推奨されています。製剤の安定性評価も同様で、有効期間が1年超であれば、同じリズムで測定を積み重ねます。
短期間設定製品での測定計画(12か月以内)
リテスト期間や有効期間を12か月以内に設定する原薬・製剤では、より密な測定スケジュールが求められます。試験開始後3か月間は月次で分析を行い、その後は3か月間隔へ切り替えます。特に不安定性が予想される製品や、申請タイミングがタイトなケースでは、品質変動を確実に捉えるため、さらに短い間隔での測定が必要になることもあります。
項目別に測定頻度を調整する考え方
すべての試験項目を同じ頻度で測定する必要はありません。無菌性試験や代替手法となる容器密封性試験は、設定するリテスト期間・有効期間の始点と終点を含め、少なくとも年1回の実施が必須とされています。一方、有効成分量、分解生成物、外観変化、水分量など、保管条件の影響を受けやすい項目は、ICH Q1Aの推奨頻度に沿って定期的に測定します。
加速試験における測定タイミング
加速試験(40℃/75%RHなど)においても、適切な測定ポイントの設定が必要です。標準的な測定時期は以下の4点です。
- 試験開始時(0か月)
- 1か月時点
- 3か月時点
- 6か月時点
製品特性によって調整は可能ですが、これらのポイントを抑えることで劣化傾向を確実に把握できます。もし加速条件で早期に品質低下が確認された場合は、30℃/60%RHなど中間条件での補足試験が必要となり、追加の評価スケジュールを個別に設定する流れとなります。
長期保存試験を通じた医薬品品質保証の実現
医薬品承認の審査において、長期保存試験は有効期間や保管方法の妥当性を科学的に裏付ける核心的なデータ源です。申請段階で必要とされるのは長期保存試験12か月分と加速試験6か月分であり、3ロット以上での試験実施が条件となります。測定は初年度3か月間隔、2年目6か月間隔、以降年1回のリズムで進め、品質の経時的な変動を精度高く捉えることが要求されます。
クリタ分析センター株式会社は、2009年の医薬品受託試験参入以降、製薬企業100社を上回る支援実績を有し、GMP省令に適合した安定性試験サービスを展開してきました。厚木と滋賀の両事業所では日本薬局方をはじめUSP、EPといった各国薬局方に対応した製薬用水の分析業務も担っており、承認審査で求められるデータを高い信頼度で提供できる基盤を整備しています。長期保存試験を含む各種安定性試験について、経験豊富な専門スタッフが計画フェーズからサポートいたします。
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